近年「日本人観光客が京都を敬遠している」という声が増えています。なぜ多くの人が“京都離れ”を起こしているのでしょうか?その背景や今後の観光動向について解説します。
なぜ「日本人観光客が京都を敬遠」するのか?
オーバーツーリズムによる混雑とストレス
京都が「日本人観光客に敬遠される」大きな理由のひとつに、オーバーツーリズムによる混雑があります。世界的に人気の観光地となった京都は、特に清水寺や嵐山、祇園といった有名スポットで、平日やオフシーズンであっても人であふれかえっています。その結果、写真を撮るのにも行列ができたり、移動に時間がかかったりと、本来の旅の楽しみである「ゆったりとした時間」を味わいにくくなっているのです。
さらに、公共交通機関や街中も観光客で混み合い、日常的な移動や食事すらストレスに感じる場面も増えています。こうした状況から、「せっかく休暇を取るなら、混雑を避けて落ち着いて楽しめる場所へ行きたい」と考える日本人が増え、結果的に京都を敬遠する動きにつながっています。
宿泊費・食事代のインバウンド価格化
京都を訪れる日本人観光客が敬遠するもう一つの要因に、「宿泊費や食事代のインバウンド価格化」があります。外国人観光客の需要が急増したことで、ホテルや旅館の宿泊料金は以前に比べ大幅に上昇しました。特に紅葉や桜のシーズンには、普段の数倍近い価格になるケースも少なくありません。
筆者も上記の要因から京都を永らく避けています。
数年前から比較するとホテル代の上昇が著しいです。
また、人気の飲食店やカフェも外国人観光客を意識した価格設定が目立ち、地元の人や日本人旅行者にとっては「割高に感じる」状況が広がっています。結果として、同じ予算であれば地方都市や他の観光地のほうが費用対効果が高いと考える旅行者が増え、京都離れにつながっているのです。
静かに観光できる場所が減ったこと
京都が敬遠される理由のひとつに、「静かに観光できる場所が減ったこと」が挙げられます。かつては寺社仏閣の境内や町並みを歩きながら、落ち着いた雰囲気や“京都らしい静寂”を楽しむことができました。しかし近年は外国人観光客を中心に常に人波が絶えず、写真撮影や大きな声の会話で周囲が騒がしくなる場面も増えています。
伏見稲荷大社等は、顕著な例です。
観光名所が“静けさを味わう空間”ではなく、“混雑したテーマパーク的な場所”に変わりつつあることに、違和感を覚える日本人も少なくありません。こうした環境の変化が、「心を落ち着けて観光したい」という旅行者の期待を裏切り、京都離れを加速させているのです。
📊 データで見る「京都敬遠」の現状 — 観光動向から読み解く
インバウンド拡大と観光客数の推移
2025年の訪日外国人観光客数は急増し、月間400万人近くが日本を訪れています。京都はその中心地となり、中国や韓国、台湾、アメリカ、オーストラリアなど多様な国籍の観光客が押し寄せています。加えて、京都市の外国人宿泊者数は2025年5月単月で65万泊を超え、主体が外国人に移っています。
1. 宿泊施設数と客室数の変遷
→ 施設数はコロナ前より減少しているものの、高密度・高級化分野での新設・部屋数拡大が目立つ傾向があります。
→ こうした構造変化は、料金上昇の余地を生む素地となっており、予算に敏感な日本人観光客を遠ざける一因になり得ます。
2. 宿泊者数・外国人比率の推移
宿泊者数・外国人比率の最新動向
ここ数年、日本の宿泊施設利用者数は右肩上がりで推移しており、なかでも外国人宿泊者の比率が着実に増加しています。2025年4月の統計によると、延べ宿泊者数は約5,305万人泊(前年同月比+1.9%)で、うち外国人宿泊者は1,729万人泊と全体の32.6%を占めています。過去最高の外国人比率となり、インバウンド需要の回復が顕著です。
年ごとの推移と特徴
- 2025年5月は延べ宿泊者数5,638万人泊、外国人は1,572万人泊となり、前年同月比+15.6%の増加でした。
- 2025年4月は外国人延べ宿泊者数が前年同月比20.4%増、比率は32.6%に上昇しています。
- 2025年7月は外国人延べ宿泊者数が1,423万人泊で、全体の約25.2%。前年同月比では減少傾向も見られますが、高水準を維持しています。
外国人宿泊者の国籍構成
訪日外国人の宿泊者数は中国が首位で、アメリカ・台湾・韓国・オーストラリアなどが続いています。中国やアメリカは前年同月比で30%以上の伸びを示しており、欧州(ロシア・スペイン・イタリア等)からの需要も拡大しています。
地域別トレンド
都市圏の宿泊者数は依然として多く、東京都が最多。大阪・京都・沖縄なども高水準ですが、地方への分散傾向も徐々に見られるようになってきました。2025年4月の外国人宿泊者数で見ると、地方比率は前年比約30%超となり、地方の構成比が上昇しています。
SNSで広がる“京都混雑回避”の声
SNS上では「京都の混雑を避けたい」という日本人観光客の声が年々増えています。特にX(旧Twitter)やInstagramでは、「清水寺は人だらけで歩けない」「祇園の風情が観光客で台無し」といったリアルな感想が多くシェアされ、旅行計画を立てる人々に影響を与えています。
また、旅行系インフルエンサーや一般の利用者が「京都は平日でも混みすぎ」「地方の方が落ち着いて楽しめる」といった投稿を発信することで、結果的に“京都敬遠”の動きが可視化され、さらに広がっているのです。こうしたSNS発の口コミは、従来の観光地選びに大きな影響力を持ち、若い世代を中心に「京都以外の選択肢」を探すきっかけになっています。
コロナ後の観光動向と国内旅行者の変化
コロナ後の観光動向を見ると、日本人旅行者の行動には大きな変化が表れています。感染拡大期に培われた「密を避けたい」という意識が根強く残り、混雑する都市部や有名観光地よりも、自然豊かな地方や人の少ない穴場スポットを選ぶ傾向が強まっています。
また、テレワークの普及により「ワーケーション」や短期滞在型の旅行も定着し、必ずしも“京都のような王道観光地”に行かなくても満足できるライフスタイルが広がりました。加えて、物価上昇や円安の影響から、インバウンド需要が高まる地域の宿泊費・飲食費が割高に感じられ、「同じ予算なら別の場所へ」という判断をする人が増えています。
このように、コロナ後は“混雑回避”と“コスパ重視”の価値観が国内旅行者の間で浸透し、結果として京都が敬遠されやすい状況を生み出しているのです。
日本人観光客が選び始めた「新しい旅行先」
地方都市や自然豊かなエリアへのシフト
近年、日本人観光客の旅行先選びには大きなシフトが見られます。京都のような人気観光地の混雑や高騰する宿泊費を避け、地方都市や自然豊かなエリアに目を向ける人が増えているのです。例えば、金沢や松江の城下町、飛騨高山や白川郷といった歴史的景観を残す地域は「第二の京都」として注目を集めています。
また、北海道・東北・九州など自然を満喫できるエリアは「静かに過ごせる」「広々とした空間でリフレッシュできる」と人気が高まり、若い世代からシニア層まで幅広く支持を得ています。観光庁の調査でも、国内旅行の目的として「自然体験」や「地域文化の体験」を重視する割合が増えており、これまで都市型観光に集中していた日本人旅行者の関心が分散しつつあることがうかがえます。
こうした動きは、オーバーツーリズムの京都を避ける代替選択肢として広がっており、今後ますます地方へのシフトが加速していくと考えられます。
第二の京都」と呼ばれる穴場観光地

近年、「第二の京都」と呼ばれる穴場観光地が注目を集めています。これは、京都のように歴史や文化が豊かでありながら、混雑が比較的少なく、ゆったりと観光できる場所を指します。例えば、岐阜県の高山や白川郷、石川県の金沢や加賀地方、島根県の松江や出雲などがその代表例です。
これらの地域は古い町並みや伝統的建築を保存しており、神社仏閣や庭園、地元の食文化を楽しめる点で京都に通じる魅力があります。しかし、観光客の集中が少ないため、静かに散策できることが特徴です。SNSや旅行ブログでも「京都ほど混んでいないのに風情は十分」といった口コミが広がり、日本人観光客が新たな旅行先として選ぶ理由になっています。
岐阜高山、白川郷の記事はこちら
こうした「第二の京都」的な場所は、混雑回避だけでなく、地域活性化や観光の多様化にもつながる重要な存在となっています。
近場旅行や日帰り旅の人気上昇

近年、日本人観光客の間では、遠方の観光地よりも近場旅行や日帰り旅の人気が高まっています。理由のひとつは、京都のような混雑した都市部を避け、気軽にリフレッシュできる場所を選ぶ傾向が強まったためです。たとえば、近郊の温泉地や郊外の自然公園、地方の小さな町への日帰り旅行は、移動時間や宿泊費の負担が少なく、週末や連休を利用して手軽に楽しめます。
また、交通アクセスの改善や観光地の体験プログラム充実も、日帰り旅行の魅力を後押ししています。SNSでは「朝出発して昼食を楽しみ、夕方に帰宅」というプランの投稿が増え、若い世代やファミリー層にも支持されています。こうした近場・日帰り旅行の人気は、京都のような観光地集中型の旅行からの分散化を後押しし、「静かで快適に過ごせる旅」の選択肢として定着しつつあります。
それでも京都を楽しみたい人へのアドバイス
混雑を避けるベストシーズン
京都を訪れる際に混雑を避けたいなら、ベストシーズンを選ぶことが重要です。桜や紅葉のシーズンはどうしても観光客であふれるため、平穏に観光したい場合はそれらのピーク時を外すのがおすすめです。具体的には、春の桜前後(3月上旬〜3月中旬)や紅葉前の10月中旬〜11月上旬前半、または冬季の12月〜2月は比較的観光客が少なく、ゆったりと寺社や町並みを楽しめます。
さらに、平日の早朝や夕方に観光スポットを訪れることで、混雑を大幅に避けることができます。例えば、清水寺や金閣寺は開門直後の時間帯に訪れると、写真撮影や散策が快適に行え、静かな京都の魅力を体感できます。ベストシーズンと時間帯を工夫するだけで、京都らしい落ち着いた旅を楽しむことが可能です。
穴場スポットや早朝観光のすすめ
京都をゆったり楽しみたいなら、穴場スポットや早朝観光を活用するのがおすすめです。多くの観光客が集中する清水寺や嵐山などの有名スポットを避け、あえて人通りの少ない寺社や町家、郊外の庭園を巡ることで、静かで落ち着いた雰囲気を満喫できます。例えば、北野天満宮や大徳寺、鞍馬・貴船エリアなどは、比較的人が少なく、四季折々の景観や歴史をゆっくり感じられます。
また、早朝の散策は特におすすめです。多くの寺社は朝7時前後から開門しており、この時間帯に訪れると人混みを避けられるだけでなく、柔らかい朝の光に包まれた京都らしい風景を写真に収めることもできます。さらに、朝市や早朝限定の体験プログラムを楽しむことで、通常の観光とは違った“特別な京都”を味わうことができます。
観光客が少ないエリアに泊まる工夫
京都を快適に観光したいなら、宿泊先の選び方も重要です。観光客が集中する祇園や清水寺周辺のホテルや旅館は、混雑や騒音の影響を受けやすく、宿泊費も高めです。そこで、郊外や中心地から少し離れたエリアに宿を取る工夫が有効です。例えば、北区・左京区・伏見区などは、市中心部ほど混雑せず、公共交通機関で主要観光地へもアクセスしやすいエリアです。
また、町家やゲストハウス、民泊を活用すると、地元の暮らしに触れながら静かに滞在でき、京都らしい雰囲気も楽しめます。宿泊場所を工夫することで、朝の早い時間から散策を始めたり、夜の落ち着いた京都を満喫することも可能です。こうした小さな工夫で、混雑やストレスを避けながら、ゆったりとした京都観光を実現できます。
まとめ|「日本人観光客の京都敬遠」は一時的な現象?
京都離れの背景を整理

近年の「日本人観光客の京都敬遠」は、決して単なる流行や一時的な現象ではなく、いくつかの背景要因が複合的に影響しています。まず、オーバーツーリズムによる混雑やストレスが大きな要因で、ゆったりと観光を楽しみたい日本人にとって京都の中心部は居心地が悪くなっています。次に、宿泊費や食事代のインバウンド価格化により、以前よりも費用が高く感じられることも敬遠理由の一つです。
さらに、SNSや口コミによる情報拡散で「混雑回避」の意識が広がり、地方都市や自然豊かなエリアへの旅行シフト、日帰り旅行や穴場スポットの人気上昇など、旅行者の選択肢自体が多様化しています。コロナ後の国内旅行者の行動変化も影響し、混雑や費用を避けつつ、静かで快適に楽しめる旅行先を求める傾向が定着しつつあります。
つまり、京都敬遠は一時的なブームではなく、混雑回避・費用対効果・旅行スタイルの多様化といった構造的な背景による自然な流れであると言えます。しかし、季節や時間帯、宿泊場所を工夫すれば、静かで落ち着いた京都観光を楽しむことは十分可能です。旅行者の工夫次第で、京都の魅力を再発見することもできるでしょう。
今後の観光政策や地域の取り組みへの期待
今後、京都の観光政策や地域の取り組みによって、「日本人観光客の京都敬遠」を改善できる可能性があります。まず、観光分散化の推進が重要です。市中心部への観光客集中を避けるため、郊外やまだ知られていない文化・歴史スポットへの誘導を強化することで、混雑を緩和できます。
また、宿泊施設や飲食店の価格適正化も期待されています。インバウンド需要に偏った価格設定を見直し、日本人観光客が利用しやすい料金体系を整えることで、費用面の障壁を下げられます。さらに、観光案内やデジタル情報の充実、早朝・夜間観光プログラムの拡充なども、快適な観光体験を提供するための重要な施策です。
地域住民や事業者との連携による持続可能な観光モデルの確立も注目されます。地元文化の保護や環境負荷の軽減を図りながら、旅行者が安心して楽しめる仕組みを作ることが、日本人観光客の再来訪につながるでしょう。こうした政策や取り組みにより、京都の魅力を損なわずに、混雑やストレスを抑えた観光環境が整うことが期待されています。
日本人観光客が再び京都を訪れる可能性
日本人観光客が再び京都を訪れる可能性は十分にあります。京都は歴史・文化・自然が融合した独自の魅力を持ち、国内外で高い評価を受ける観光地だからです。混雑や高額な宿泊費がネックとなって一時的に敬遠されている状況でも、観光政策の分散化や穴場スポットの開発、早朝・平日観光の工夫により、快適に楽しめる環境が整えば再び訪れる動機が生まれます。
さらに、SNSや旅行情報サイトで「静かに楽しめる京都」「地元グルメや季節限定体験」の情報が広まることで、混雑を避けつつ京都らしさを味わえるプランが注目されつつあります。こうした情報の浸透や地域の取り組みが進めば、日本人観光客の京都回帰は十分に期待でき、従来の王道観光地としての地位を再び確立できるでしょう。
筆者も大好きな京都でおいしい食事、洗練されたホテルでの宿泊を再開できるのを心待ちにしています。
